以前にバイト先で知り合ったバングラデシュ人の方から、
「Facebookやってる?ぼくLINEとカカオトークもやってる。ID交換しませんか?」
と言われたことがあります。
飲食店でホールのアルバイトをしていたのですが、建物の老朽化に伴ってレストランフロアの全面改装が行われるために、その間お店がお休みすることになってしまい、行くあてのない私はちょうど隣駅にある系列店でリニューアルオープンするまで働かせていただけることになって諸々の手続きを済ませ無事に初出勤した日の出来事でした。
そのお店は厨房とホールで完全に男女が分かれるようなかたちになっていたので、ホールの女性陣には機敏な対応とチームワークの良さで圧倒されました。しかも、ベテランのパートと社員のみで構成される最強チームのなかで唯一のアルバイトがこの私でした。その人たちにすればポンのコツがきおったなという感じだったと思います。
それで、なかなかその店に馴染めず緊張しっぱなしだった私に対して、初めて見たその外国人は、
「これからよろしくね。ぼくはバングラ(仮)です。」
と名乗ると、初対面である私にたくさん話しかけてくれました。
バングラさんだけはとてもウェルカムで、お店の仲間としてすぐに受け入れてくれました。
ところが、バングラさんは、冒頭のあの一言からもお分かりいただけるかと思いますが、距離の縮め方が半端ではありませんでした。
「名前は何デスカ?」「まめって呼んでいい?」「髪が真っ黒でいいね?」「若いね今いくつデスカ?」
勤務中に私語がとどまるところを知らない。しかも、これだけみれば、ふつうの気さくな人だけど、どこか落ち着いていて淡々と物申すので、
SNSのID教えてという踏み込んだ質問を、どういうテンションで言ってきてるのか分かりかねました。
バングラさんの優しさをありがたく感じながらも、とりあえずあまり関わらんとこ…と思うのでした。
それでも結局、毎週のように連絡先を聞き出そうとしてくるので、好意を無下にするのも良くないと思ってLINEだけ交換することになりました。
バングラさんは、超弩級のフレンドリーだから、自慢の手料理の写真を送ってくれたり、自宅でパーティをするからおいでと招待してくれたり、今どこどこに居るからまめもおいでと誘ってくれたりしました。
とにかく、たくさん、コンタクトをとりたがりました。
あと、バングラさんの以前の仕事はバーテンダーで、その前はもっとすごい仕事をやってて、お金がたくさんあるから困らないんだ。こんどたくさんごちそうするよ。とか言ってて何がどこまで本気なのかよく分かりません。
職場外での接触は避けたほうが良い気がしたので、すみませんと言って毎回断っていたのですが、バングラさんは、ならば次の手だ、という感じで今度は たくさん電話したがりました。LINEもそうだし電話もそうだけど、こっちが丁寧に応えていると拍車がかかって毎日欠かさず連絡してくれて、
「ぼくはいつでもokですから明日も連絡くださいね。電話大丈夫です。」
みたいなことを言ってくるので、もうそろそろ勘弁してくれと思いました。こっちはバングラさん(仮)のガールフレンド(仮)ちゃうから。耳で萌える学園恋愛ゲームとちゃうから。
などとほざいてみたりすることもできず、そんな日々が延々と続くのかと思われました。
でも、あるときを境にして、
「もしかして、ぼくのこと嫌いデスカ?」
「心配しなくてもぼくは変な人じゃないよ」
「sorry.たくさんぼくばっかりメッセージおくってるね、でももっと仲良くなりたい」
と色々言って謝るようになったので、
嫌いではないけどあなたとの時間より優先しなきゃいけないことがあるので分かってください。みたいなことを言ったところ、
「分かりました、また時間があるときでいいから返事下さいねたまには電話もしたいです。」
と返ってきて、ほんとに分かってるのかと不安が残りましたが、少しほっとして数日くらいは音沙汰もなく平和な日々を過ごしました。そんなある日、バングラから届いた一件のメッセージ。こんな感じでした。
「まめさん元気?やぱり怒ってるね。ぜんぜん連絡くれない。今日はバイトいく前に時間あったらごはんに行きましょう。無理だったら一緒にバイト行きましょう。」
やっぱり分かってないですよね。でも、なんかもうここまでくるとバングラさんもかわいいなと思えてくる。友だちだいすきなんだね。付き合いとか友情とかめっちゃ大切にするひとなんだね。大切にした過ぎてちょっと固執しちゃうんだね。つって。
今となると、わりと落ち着いて考えられるのですが、その時の私にはお手上げ状態でした。
職場では必要最低限の会話以外しないように距離を置きました。その後も何度か食事の誘いがありましたが、それを私が全て断ってしまったので、何を思ったかバングラさんは、仕事が終わると、私が退勤して出てくるまで外で待ち伏せるようになりました。
とうとうその手を使われてしまうと、こちらももうビビるしかなくなってしまいました。恐怖100倍バングラマン。
通りのガードレールのそばの公衆電話に寄りかかっているバングラマンなんて恐怖1000倍。こちらは、話しかけに行ったら最後、バングラパンチやキックがとんでくることも念頭に置いているわけです。見つけても絶対に気付いてないフリをしてエスカレーターの右側を早歩きで駆け上がって駅へ向かうの、まじでスリリングでした。
奇しくもこのタイミングで私はもとの店舗に異動が決定して、それを知ってか知らずが、紫色のメチャメチャ大きな便箋で手紙をしたためてくれました。唐突に紫色のおっきな紙渡されたらビビりますよね。日常で紫色の紙渡される場面そうないですよ。
でも、やっぱり異動後にLINEで
「何も言わないで消えたね。ひどい」
と言われてしまいましたが、そんな言い方されると、えっ ( ◜. _ .◝ ) ってなります。
ただこうして振り返ってみると、なんだかすこし悪いことをした気がします。距離感が嫌で勝手に怖がったりむやみに避けたりしてしまっていたな、と。ふつうにお話がしたかっただけなのかも。
I hope our friendship going to long time. If I have a some thing wrong please tell and teach me. I give you letter Don't mind please. Hope are you read this letter you make a happy.
Your friend
Bangura(''kari'')
あれからも、たまに隣駅を利用するときにドキドキします。店長にも誰にも話せなくて完全に一対一の攻防だったので、毎週バイトの日は一種の戦いだと思っていかないとめげ死にそうだったのを思い出します。今は怖くないと言ったら嘘になりますが、もう笑い話にできるので良かった。
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